最近、ソーダ割りというものが私の生活のなかでかなり自然に飲まれるようになりました。
言わずもがな、世の中ではハイボールとレモンサワーが居酒屋の飲料メニューの大きなシェアを占めています。私の贔屓にしているお燗酒を売りにしているお店に行っても、カウンターの半分の人は、レモンサワーを飲んでいます。特に夏の暑い時期にはカラカラという氷の音とシュワっというソーダを注ぐ音も効果音になって、とても美味しそうに見えるのです。
ここまで流行っていると、ひねくれ者の私はそのふたつの飲み物を注文することは殆どないのですが、その代わり少し辛口のにごり酒のソーダ割りや焼酎のソーダ割りを飲むことが増えました。
何故だかはわからないのですが、昔はソーダで割って飲むことになんだか抵抗感があって、にごり酒はほとんど口にすることがありませんでしたし、焼酎も基本的にはお湯割りかロックで飲んでいました。
多分時代の流れとともに、ソーダという飲み物が生活のなかに根付いてきたということなのかもしれません。今では、1杯目の飲み物ににごり酒のソーダや焼酎のソーダ割りを飲むことが間違いなく増えました。焼酎のソーダ割りにいたっては、最初から最後までそれで通すこともあります。
自分の嗜好も随分と変わったものだと思います。もちろん今でもお湯割りが大好きであることに変わりはありません。お燗酒とお湯割り(もしくは前割りのお燗)という「温めて飲む文化」は、日本の酒文化の宝だと思っているので、それはまったく別の次元で私の中心を占めています。
でも、今日は最近好きになってきた焼酎のソーダ割りについて書こうと思います。
今から四半世紀ほどまえに、第3次焼酎ブームというものが訪れました。それまで関東では「臭い」と言われていた芋焼酎の香りをひとつのフレーバーとしてプラスに評価する、画期的なブームだと思っています。「におい」という言葉から「香り」という言葉に表現が変わった途端に、人に感じるイメージは180度変わります。日本全国の人が焼酎に押し寄せ、酒販店の店頭には売る商品がなくなるほどの人気が市場を席巻し、「芋焼酎なら品質度外視で何でもよい」というくらいの市場のひっ迫感が生まれたのです。
その時代、芋焼酎の本場である鹿児島では、焼酎は基本的にお湯割りで飲まれていました。飲食店に行くと、何も言わなくても900㎖のボトルとお湯割り用のポットが出てきて、ひたすらそれを飲むのです。2人で900㎖ボトル1本というのが普通のペースでした。
でもこのお湯割り文化は、焼酎ブームの時に東京には根付かなかったのです。私を含む一部の人間以外は、ロックで飲むのが一般的でした。
お湯割りで飲めば2人で5合の焼酎を飲むのに、ロックで同じ量を飲むのは相当きついことです。
酒の流通にいた私は、より多くの焼酎が消費されるためには、ロックという飲み方をしていては難しいと感じたので、割って飲む文化を東京でも定着させることが必要だろうと思いました。でもお湯割りが定着しないのであれば、冷たくして飲める飲み方としてソーダ割りという方法を広める必要があると考えたのです。
色々な焼酎をソーダで割って飲んでみました。しかし当時市場に出回っていた焼酎のなかで、ソーダ割りにして「これだ!」と思えるお酒に出会うことはできませんでした。
減圧の麦焼酎はソーダを凌駕するパンチに欠け、芋焼酎は悪く言えば田舎臭くて、ソーダで割って爽快に飲むというイメージには程遠い酒質に思えました。
「これは無理だ」というのが、20年以上前に私の出した結論でした。
この酒質で都会の消費者を虜にすることはできないという結論です。
しかし、それから焼酎業界は大きく進化しました。
都会を知り、海外を知り、そこで戦うことを考える若い造り手たちが、さまざまな試行錯誤のなかからユニークな酒を創り出してきたのです。
彼らが造る焼酎は千差万別で、それぞれの志向がとても明確に表れていると思いました。ある者はお湯割りでのむオーセンティックな酒質を極め、またある者は芋焼酎の常識を覆すようなフルーティーでライトな香りを創り出し、またある者はカクテルに使っても負けない独特の個性を創り出しました。
それらの焼酎を飲むとき、不思議なことに、どんなにオーセンティックなお湯割り向けの酒質であっても、ソーダで割ることによって崩れたり異臭がでたりということはありませんでした。お酒が洗練されたと言えば良いのでしょうか。
今では、私は自信を持って焼酎のソーダ割りをお勧めすることができます。
特に暑い夏にはキリっとした日本酒でも少し濃く感じられます。そんな時、焼酎のソーダ割りは本当に楽で爽快です。
本格焼酎という飲み物は、世界に類を見ないユニークな蒸留酒です。
その最大の特徴は、多種の原材料と醸造方法から生まれる多様なフレーバーで、これは世界の他の蒸留酒には見られない極めてユニークな特徴です。
この多様性を生み出す基になっているのは、ユネスコの無形文化遺産に登録された「麹を使った日本の伝統的な酒造り」。麹と並行複醗酵による醸造技術ですから、まさに日本に特有なものなのです。
この多様性を、ソーダ割りというシンプルで訴求力の高い飲み方で楽しむことで、私は、焼酎にはハイボールやレモンサワーを凌駕するポテンシャルがあると思っています。
なんかそんな未来を描くと楽しいですよね~。
