私は長く流通の世界で生きてきた人間なのですが、
地方清酒の売り場、
特にこだわった商品、流行商品の売り場としては、飲食店市場が圧倒的に強いイメージを持っていました。
東北大震災のあと、2年くらい経ってから日本酒の需要が若者を中心に伸びはじめ、
若手蔵元杜氏の酒がグルメ雑誌などに取り上げられるようになると、
一挙に清酒ブームともいえるような盛り上がりが訪れ、
夏酒・ひやおろしなどの季節商品、
本数限定の「今だけ、あるだけ、ここだけ」という商品が
面白いように売れるようになりました。
長く日本酒の流通にいて、
売れない時代を知るものとしては、
びっくりするくらい簡単に売れる時代になりました。
その多くを吸い込んでいたのが飲食店市場です。
レアな限定商品となると、
生に人気が集まります。
季節商品や限定商品は、圧倒的に生酒が主流で、
斬新なラベルデザインを競い合って、
次々に面白い商品が市場にでてきました。
私は家でめったに生酒を飲むことはありません。
フレッシュな生の風味は、
テイスティングをする分には非常に魅力的で、
アロマチックで、エロチック。
でも、果実味を帯びたフレッシュなアロマは、
自宅の食卓には必ずしもマッチしません。
例えばイタリア系のトマトとバジルのサラダだとか、
オリーブオイルにハーブとレモンをかけたカルパッチョとか、
果物のサラダとか、シュリンプカクテル。
そんなものを食べているのだとすればいいかもしれません。
でも我が家の食卓は味噌汁に納豆、
漬物に焼き魚、
醤油ベースのソースでたべる牛肉や豚肉。
これではフルーティー&フレッシュな生酒を飲もうという気にはなりません。
さらに、私は生酒を常温で置いておくとどうなるか知っています。
冷蔵庫、それも低温の冷蔵庫でしっかり貯蔵するのが生酒の鉄則。
であれば、我が家の小さな冷蔵庫には1本以上の生酒をキープすることは不可能です。
家庭用に安心してお勧めできるのは、720㎖以下の火入れ酒です。
飲み飽きしない、腰のしっかりした酒なら、1.8ℓでも良いかもしれません。
春の新酒生酒をたっぷり仕入れた酒販店から、
悲鳴があがっています。
飲食店向けの出荷が滞ると、1.8ℓの生酒はまったく売れません。
家庭用で売れるのは720㎖以下。
できれば火入れ商品です。
この状況で飲食店に1.8ℓ生酒を売って頂こうとするなら、
国税庁が早々に免許要件緩和を打ち出した飲食店向けの臨時酒販免許しかありません。
飲食店店頭の量り売りです。
飲食店には、少ししっかりした蓋つきのプラカップを仕入れて頂き、
1杯いくらで売って頂けば良い。
普段毎日のように外飲みをしている人達は、
少しでも飲食店の非日常が味わえる酒肴と酒を望んでいます。
かなりのフラストレーションとともに。
こういう情報交換、コミュニケーションが、
こんな時にこそ必要なのでしょう。
自分に何ができるのか、毎日考えています。
