日本酒の世界は、90年代に十四代の高木さんが出現して以降、
たくさんの意欲的な若手蔵元杜氏が業界に飛び込み、
それまでの慣習を打ち破る発想で、リスクをとった新商品開発を行った結果、
若い消費者のハートを射止める商品が次々に現れました。
私が30年にわたって日本酒に携わってきて初めての経験です。
それは目を疑うような躍進だったと思います。
長年にわたって停滞してきた日本酒業界に、
若者や女性が目を向ける変化をもたらしたのは、
間違いなく若い力であったと思います。
若いエネルギーが同世代の共感を呼び、
さらに世代を超えた共感に繋がったのです。
ベテランが何もしていなかったわけではありません。
でも、若い消費者を動かしたのは、やはり同じ世代の若者だったということでしょう。
日本酒が世界の注目を集めるようになり、
多くのマスコミに取り上げられるようになりました。
最初は香りと酸味に偏った傾向の強い酒が優勢でしたが、
徐々に自分のスタイルを前面に押し出した、もう少し主張のある酒が出現してきました。
流行りとは真逆をゆくどっしりと重厚感のある酒。
熟成を楽しむ嗜好。
ワインに負けぬ自然派と土着にこだわる酒。
発泡性清酒への特化。
生酒しか造らない蔵元。
自社の水質にこだわりぬいた酒造り。
古(いにしえ)の技術の復活。
そして小型のクラフトブルアリーによる自由な酒造り。
若いエネルギーが、どんどん新しい創造的破壊を起こしています。
消費者とのコミュニケーションの形も変化してきました。
次はどこの蔵元がどんなことを仕掛けてくるのかな、と
楽しみながら市場を見ています。
そんな日本酒の元気な蔵元が華やかにマスコミの寵児になっていた頃、
九州の焼酎蔵元はとても静かに見えました。
平成15年から5年あまり続いて今につながる焼酎ブームを経て、
消費がピークから漸減傾向になった時、
市場は全体が漸減しながら、霧島酒造を中心とした大手銘柄集中化をしました。
そして、焼酎ブームの時にあんなに元気だった中小焼酎蔵元たちの声が、
なんとなく聞こえにくくなりました。
保守的な九州の土地柄からでしょうか、
なかなか蔵元の世代交代も勢いにのらず、
もったいない。
早く若い連中が出てこいと、心ひそかに思っていました。
でも、今ようやく変わってきました。
世界の市場が変わってきたからです。
日本にいるとなかなか感じることのできない感覚だと思いますが、
世界には、私たちに馴染みの深いワイン文化とともに、
大きなスピリッツ文化というものがあります。
世界のスピリッツは、日本の本格焼酎とは違って食後酒やカクテルとして飲まれることが主ですが、
このスピリッツを愛する人たちが世界にはたくさんいます。
アメリカを中心に大きなムーブメントとなったクラフトビールブームが、
ジンやメスカルといった多様性のあるクラフトスピリッツブームに繋がり、
ニューヨークなどの大都市のバーシーンの話題になってきました。
世界のバーテンダーやミクソロジストは、新しい、面白いフレーバーを求めています。
そして、日本のジンや本格焼酎に目を向けているのです。
本格焼酎は、日本では日本酒の代替品として飲まれてきた歴史があります。
ですから、飲み方も水割りやお湯割りにして、日本酒と同じように食中酒として飲まれてきました。
常圧の個性的なフレーバーを楽しむというよりは、邪魔にならない減圧のライトなタイプが主流でした。
でも今、世界の潮流に向き合った時に、本格焼酎蔵元は今更ながら気が付きました。
本格焼酎はスピリッツであると。
同じ酒でも、日本酒の延長として見るのか、
それともジンやアグリコールラム、メスカル等のスピリッツの延長で見るかによって、
広がる世界がまったく変わってきます。
本格焼酎は、今そのようなポジションにいるのだと思います。
新しい世界の広がりが感じられる、
夢のあるポジションです。
若手も続々と出てきました。
先日、Facebook にアップされた 南九州の若手蔵元たちが作った動画を見ました。
Zoom で打合せをして2日で作ったという動画ですが、
素晴らしかった。
彼らが手を繋いで同じ方向を向いて走り始めたというのは、
本当に希望を感じます。
必ず次に繋がる何かが生まれてくることでしょう。
若手焼酎野郎たちに幸あれ!
